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製作現場から思うこと


比叡山延暦寺(根本中堂と廻廊)

現在修復が行われている延暦寺の根本中堂。瓦棒銅板葺と呼ばれる施工方法で葺かれていますが、当初は栩葺と呼ばれる厚板で葺かれていたという記録が残っています。

今回工事では原材料確保などの観点から、当初材への復原は見送られ、廻廊のみ栩葺となりました。


その廻廊の屋根ですが、平葺と呼ばれる平面に使用される板は、長さ1.5尺(約45㎝)厚み8.0分(約2.4㎝)の材料が使用されていて、これが一番多く必要になります。


それ以外にも軒付用、隅葺や谷葺用の板、唐破風用の板など様々な種類の板が必要になっています。

長さもまちまちで7.0寸~8.0寸(21㎝~24㎝)、1.1尺(33㎝)、1.3尺(39㎝)…という具合です。

仕様とは言え、なんか変な長さだなあとは思っていました。


基本は1.5尺(約45㎝)ですので、原木を玉切りする際にはこの長さで切っていきます。

ご存じの通り、木には「節」がありますので、その部分は割ることが出来ません。節の全くない木など、ほとんどありませんから、1.5尺で使えないものをどうするか?先人たちも頭を悩ませたことでしょう。

1.5尺に使えないものは…捨てるか…。それは勿体ないですよね。

この節付きのみかん割材、さらに短く切れば使えます。それも大概2.0寸ほどきれば、きれいな材になりますので、

1.5尺で使えないものは1.3尺、さらに1.1尺、そして7.0寸~8.0寸用の材料へ。

こうやって取り分けながら加工していけば、1本の木を余すことなく使うことが出来ます。


ちなみに廻廊屋根では棟際の葺き詰め板が1.1尺、中門の唐破風屋根が1.3尺、唐破風部分は8.0寸、軒付用材は7.0寸です。

様々な長さの材料

延暦寺の屋根工事に使用される「栩葺材」はサイズも大きく、非常に多くの原材料を使用します。

60年に一度の修理工事とはいえ、それを支える山の資源は限られていますので、「余すことなく使うこと」は建物や技術を保存・継承していくうえで非常に重要な要素です。

工事開始から6年が経ちますが、材を製作する立場から「すごく考えられ、理に適った仕様なのだ」と強く思います。


今年度工事が最後の製作になります。車寄せと呼ばれる唐破風部分の修理が含まれますが、ここの板が長さ1.8尺…

「この仕様が分かっていれば先に加工を進めたのに…」と非常に残念に思います。


解体時にこのサイズの板が出てきたそうですが、1.8尺の長さが取れない部分を何に使うか??

他の箇所は、ほぼほぼ完了していますので、非常に頭を悩ませています…。


製作現場から思うことはたくさんありますが、私たちの声が現場に届くことは、なかなかありません。


願わくば、工事仕様書(設計書)を作成される方には、もう少し、山や森の方を向いて頂き、是非思いを馳せてもらいたい。


我が国の伝統技術は、常に自然と共存しながら伝えられてきたものなのだから…。















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