こけら葺
1300年以上の歴史を持つ、
世界にも類をみない日本の屋根工事技術、「こけら葺」
こけら葺とは
重要文化財に指定されている日本の伝統的建造物の多くが檜皮(ひわだ)、杮板(こけらいた)、茅(カヤ)などの植物性資材で葺かれています。これらの屋根工事技術は1300年以上の歴史を持つ、世界にも類をみない日本独特の文化です。板を用いた「杮葺」(こけらぶき)と呼ばれる屋根工法も豊富な森林資源を背景に、独自の発展を遂げてきました。
板葺は世界各地にも見られますが、その多くは厚板を並べて石を置くなど無骨な形態のままで、日本の杮葺きのように華麗なまでに発達した地域は他では見られません。その起源は飛鳥時代(7世紀中頃)まで遡るといわれ、平安時代には貴族文化の中で成熟し、江戸時代に完成されたと言われています。
杮葺は板葺の一種です。杮が「木片」を意味するように、椹や杉などの薄い手割りの板を野地板の上に1寸(3cm)ほどの間隔で葺き重ね、竹釘で留めて順次上の方向へ葺きあげていく工法です。
植物性資材を用いる日本独自の屋根技法「こけら葺」
葺き替えが終わった美しい屋根
木目に沿って割られた杮板で屋根を葺くと、板と板の間に少しの隙間ができます。これが屋根裏の通気を促し、木材の耐久性を高めます。檜皮葺きと同じく、入念に施工された仕上がりは優雅で繊細な上品さが漂います。
平成26年10月現在、国の重要文化財に指定されている建物4,676棟のうち、檜皮葺は824棟、杮葺は353棟、茅葺が389棟となっています。つまり、重要文化財の総棟数の33.5%が植物性の資材で葺かれていることになります。これらを支える技術は国の選定保存技術に選定され、その保護が図られています。
植物性資材で葺かれた屋根は経年劣化により、定期的な葺替えが必要になります。杮葺に限って言えば、おおよそ20年から30年のスパンで繰り返し葺替え工事が行われています。これらの工事は文化庁を始め、各都道府県教育委員会の設計監理の下、国庫補助事業として毎年計画的に行われています。