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栗山光博

木は一枚一枚違って、
同じようには割れないね、やっぱり

INTERVIEW

職人インタビュー

選定保存技術保持者

文化庁では文化財の修理技術やそれに用いられる材料および道具の製作技術などを「選定保存技術」とし、その技を持つ人を「選定保存技術保持者」と認定しています。
栗山光博は、平成23年に、屋根板製作の「選定保存技術保持者」に認定されました。

選定保存技術保持者 栗山光博さん

選定保存技術保持者 栗山光博

最初は、とにかくとにかく「木取り」でした

―― こちらで仕事されるようになった頃、どんな作業をされていたのですか?

当時は、入ってすぐには「へぎ」(板を割ること)はやらないで、切ったり木取りをしたりして、へぎをやるのだって、今はすぐにやるけど、「2~3年早い」っていわれてね。(笑) 

最初は体を作るのとか、木の目の感覚とか、一寸六分や八分の厚み感覚を目で覚えるために、とにかく木取りでした。うちらの時代はね。

その頃は製材もやっとったから、木の皮を剥いたりね。それをしながら、職人さんが一人おって、その人の使う木取りをしていたね。だから最初は木取りばかり。最初は全然うまくいかなくてね。(笑)

―― それで「板へぎ」をされるようになったんですね。

「真ん中で割れ」って言われてやってみても、なかなか割れなくて。ゴミのような使わない木で、「練習用に」ってね。

 

「真ん中で割れ」と言われても、最初はなかなか割れなかった

「真ん中で割れ」と言われても、最初はなかなか割れなかった

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木は一枚一枚違って、同じようには割れない

―― 素人から見るととても気持ちよさそうに割れていくのですが、やはり1枚1枚割り方が違うのですか?

今、こうやって割りましたけど、次に割る時にはやっぱり違いますよ。節の具合、足の力の入れ具合とか。さっきまで割れたけど今回はダメとかね…。この木とこの木でも違うしね。一枚一枚違って、同じようには割れないね、やっぱり。人のを見ていると簡単そうに割っているけど。(笑)

―― 光博さんでもうまく割れないこともあるのですか?

毎日、「こんちきしょう!」って思うね(笑)

―― 奥が深い作業なんですね…

感覚を覚えるとラクにできるようになるかな。感覚を覚えるには、数を当たらないとね。その人その人の感覚でだんだん頭の中に入っていくというのかな。

 

積み上げられる艶やかな「こけら板」

積み上げられる艶やかな「こけら板」。
職人の手によって一枚一枚作られていく。

特別ではなくて、外科医が手術しているのと同じ

―― ここで作られた「こけら板」が金閣寺などの文化財の屋根に使わることに特別な想いはあるんですか?

何と言ったらいいかなぁ。もう小さい時から見ているからねぇ。特別な感じじゃなくて、もうそういうもんだっていう感じかな。

お医者さんの外科医がこうやってスースーと手術しているのと同じだね。(笑) 
最近はたまたま色々と言ってくれるけど、そういうもんか…という、そんな感じかなぁ。

―― 若い方もいますが、どう指導されているんですか?

簡単ですよ。真ん中から割れって。(笑) あとは手を切るなって。(笑)
もうそれ以上はないね。まずはそれだな。

―― そうは言ってもなかなか難しいのでは...

でもみんな、やる子はすぐにやるね。
うちが一番心配するのは、とにかくケガをしないこと。例えば、手を振り上げないようにするとかね。木取りでもそうだけど、「槌を振る」んじゃなくて、「槌を落とす」んだよ。

―― 力に頼っちゃダメなんですね。

そうそう、だからラクなんですよ。

―― 素敵なお話、ありがとうございました。

ありがとうございました。

 

指導は簡単ですよ。真ん中から割れって。(笑)

指導は簡単ですよ。真ん中から割れって。(笑)

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